1.レーザー透過溶着法とは
■レーザー透過溶着法
レーザー樹脂溶着の中で、一般的なのがレーザー透過溶着法と呼ばれている工法です。
この工法では2種類の部材が必要となります。レーザー光を吸収して発熱する吸収側材料とレーザー光を透過させる透過側材料になります。
この2つの部材を密着させ、透過側部材の側からレーザー光を照射させます。
レーザー光は、透過側材料を通過して吸収側材料に当たると、そこで発熱し、樹脂の溶融が起こります。
そこで発生した熱が透過側材料に伝播し、透過側材料も溶融します。
この互いに溶融したところが融合し、冷却後に固化して溶着が完了します。
レーザー樹脂溶着を実施するためには、レーザーの出力や走査速度、ビームスポットの大きさ等の溶着条件を決める必要がありますが、実際にレーザー光を透過する材料の光学物性が把握できていなければ、安定した製品を量産化することができません。
溶着条件を決め、安定した溶着体を得るためには、レーザー透過溶着法に限らず、樹脂材料の透過率などの光学物性を把握しておく必要があります。
■レーザービーム
レーザー透過溶着法(LTW)を行うためには、まずレーザービームの種類が重要です。
樹脂用レーザーの種類には、ファイバーレーザー[波長:1070nm]やYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット結晶)レーザー[波長:1064nm]やLD(レーザーダイオード)[808、840、940nm]などがあります。
一般的にはビーム品質(熱源)、パワー安定性、コストなどを総合的に判断し、最適なレーザーを選定します。プラスチックの種類によっては、これらの波長で吸収ももつ材料もございます。
2.長所と短所
■長所
+ 良外観 (非接触溶着)
+ 局部加熱(熱による歪(ひずみ)がほとんどなく、薄肉な精密溶着が可能になります。)
+ 信頼性 (溶着強度、気密性、正確なエネルギー制御ができます。)
+ 無振動 (例えば、デリケートな構成部品への悪影響がありません。)
+ 静音性 (例えば超音波のような雑音(ノイズ)がありません。)
+ 作業性 (バリや微粒子ダストがありません。)
■短所
-生産性(溶着速度)
-光学特性の異なる材料(光透過性樹脂材料と光吸収性樹脂材料)を必要とします。
⇒当社ACWであればこの課題を解決できます!
・レーザー透過溶着法は他の溶着法に比べ、外観影響、内部影響に優れていることがポイントです。
外観影響-バリの発生、外観不良が少なく、製品の意匠性に優れていること。
内部影響-熱や振動の影響が少なく、精密電子部品等の梱包に最適です。
・また、接合性能の向上を狙う生産技術としては、接着剤での接合方法の代替検討が最も有効であると思われます。
・更に、生産性やコスト面でレーザー透過溶着法は、初期投資や原材料コストアップが予想されますが、
ボルト・ナット締めなどの人件費高。
振動溶着などのイニシャルコスト高。
を考慮すると、レーザー透過溶着法が有効な生産性やコスト面で有効であると思われます。
3.プラスチックと着色材料
レーザー透過溶着法(LTW)に使用されるプラスチックや着色材料は、光透過性樹脂部品と光吸収性樹脂部品では大きく異なります。
レーザービームは、光透過性樹脂部品の場合ではできるだけレーザービームを透過させなければならず、逆に光吸収性樹脂部品の場合では吸収させ、発熱させなければなりませんので、それに合わせてプラスチックや着色材料を選定する必要があります。
ここでは、プラスチックと着色材料の選定だけに焦点を絞って説明します。
なお一般的な着色材料には顔料系と染料系があり、顔料系には無機顔料と有機顔料があります。
A.光透過性樹脂部品 (材)
必要な性能:レーザービームを透過させること(3mmの肉厚レベルで15%以上のレーザービーム透過率が必要。)好ましくは20%以上の赤外線透過率。
B.プラスチックと充填材(フィラー)
光透過性樹脂部品には、レーザービームを透過しやすい非晶性樹脂が有利ですが、結晶性樹脂でも使用されています。
ガラス繊維は、レーザー光を散乱させますが樹脂部材の溶着部の厚みに応じて使用可能です。
タルクは、レーザー光を反射させ、レーザー透過率を低下させます。
C.顔料
顔料はプラスチックに溶解せず、粒子(凝集物)として分散されています。そのため顔料はレーザービームを吸収・反射(または散乱)させるので、赤外線(レーザー)透過が困難になります。
したがってレーザー透過溶着法(LTW)では不向きな着色材料になります。
D.染料
染料はプラスチックに分子レベルで溶解するため、着色が均一で色相も安定しています。
染料の透過性はプラスチックによって異なりますが、非常に高い赤外線(レーザー)透過性能を持つことができます。
E.光吸収性樹脂部品(材)
必要な性能:レーザービームを吸収し、発熱させること。
プラスチック・・・レーザー吸収色素を用いれば、結晶性樹脂でも非晶性樹脂でも使用可能。
着色材料・・・顔料系吸収色素と染料系吸収色素との組合せが好ましい。
F.プラスチック
光透過性樹脂部品とは逆に、レーザー吸収色素を用いれば、結晶性樹脂でも非晶性樹脂でも使用可能です。
G.顔料系吸収色素(例:カーボンブラック)
顔料は、一般的にレーザービームを吸収、反射または散乱します。
実際の使用においては顔料がプラスチックの結晶性に影響を与えるため、注意が必要です。
また一般的な顔料系吸収色素としては、カーボンブラックが使用されています。
ただしカーボンブラックはレーザービームの吸収が強いため、添加量や分散状態により異常な発熱反応をひき起こし、プラスチック自体の分解点を超えるような温度上昇を招く危険性があります。
その結果、溶着不良や溶着時のガス発生、溶融プールでのボイド(気泡)の発生、およびプラスチックの劣化の原因になるため、光吸収性樹脂部品の材料の組成には注意が必要になります。
H.染料系吸収色素(例:eBIND LAW)
顔料系吸収色素だけでは、レーザービームを吸収しすぎて局部的に異常な発熱が起こる危険性があります。また染料系吸収色素だけでは、吸収が弱くレーザービームを十分に吸収することが難しくなります。
そこで染料系吸収色素と顔料系吸収色素とを組合せて発熱量をコントロールすることにより、柔軟な溶着条件を導きだし、より安全性で高品質な溶着部品を提供できます。
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